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エストニア視察

2019-11-15 15:00

ロシアに里帰りした時、実はエストニアにも寄ってきました。

日本におけるエストニアへの興味は高いですが、実際にエストニアに住みながらビジネスをしているのはごく少数。 ただ、エストニア自体は市場として小さく、ビジネスを行う際のプロセスがかなりデジタル化されているので、エストニアに住所を持っている限り、エストニアにいなくてもビジネスができるという印象を受けました。

会ってきたスタートアップ編

それぞれのスタートアップのサービス概要やデモは貼っているリンク先で確認できるので、それをわざわざ説明することはせず、ディスカッション中に面白かった点のみを取り上げています。

Veriff

一つ目はVeriffは本人認証のソリューションを提供しているスタートアップ。

サービス利用時の本人確認を画像だけではなく動画と音声も用いて行っており、その理由を聞くと、「銃を突きつけられて本人確認書類を提出していないかことを確認するために動画と音声が必要」とのこと。「76% of fraud related to process manipulation」だそうです。

ソ連や自国の独裁者による統治など東ヨーロッパの歴史を知らないとなかなか理解できない回答なのでは。日本でこの理由を言っても変人扱いされる気がします。 最近Data IntegrityやEthics in Dataに非常に興味があるのですが、Identityなどを含めた技術ソリューションを考えるときに文化や倫理などを考慮しなければいけないなと強く思いました。

インターネットにはIdentity Layerが存在せず、20年たった今も画面の向こうにいるやり取りしている相手が犬か人間かわからない、というお話を以下のNewYorkerの1990年の風刺画を用いてすることが多かったのですが、よく考えたら、画像+動画+音声を駆使すれば、画面の向こうが誰だかを知ることってできそうですよね。

220px-Internet dog

「長期的なビジョンは、A single global identity on Earth」というお話になった時、そこのビジョンはスタートアップでもNGOでも一緒だなんだなと嬉しくなりました。

この分野には、Onfido, Jumioという競合がいたりします。

Helmes

ソフトウェアを作りたい企業向けにTechリソースを提供する企業:Helmes (エストニア基準ではスタートアップのベネフィットを得られなくなったらしい)

ハイレベルITコンサルのようなものなので、現地のアクセンチュアとかデロイトとかと競合しないのか気になりましたが、そもそもアクセンチュアとかはドイツ・フランス・イギリスをメインに狙うから、エストニア周辺にはいないのかも。

面白かったのは、「日本におけるスタートアップの定義はなに?人数?売り上げ?設立からの年月?」と聞かれて言葉に詰まったこと。どう答えますか? 詳しくリサーチできていませんが、日本においては、資金提供側が指定する条件によって「スタートアップ」の定義が時と場合によって変わるイメージ。 「私たちはスタートアップ」と主張すればそのまま通る一面もあるような。

それから、エストニアは歴史的に日本のような100年企業は存在しえなかった、という議論もEye-openingでした。 冷戦の影響をうけて資本主義と社会主義の両方の経済体制を経験しているエストニアをはじめとした国々は、同じ企業が法的に存在し続ける方法がなかった。 日本は第二次世界大戦で負けた後にGHQの支配下に置かれたものの、経済体制自体は変わらなかったため、100年以上続く老舗企業も存在し得るという見方もできます。 #1000年以上続く企業もあるらしい。恐ろしあ

ベラルーシが素敵なTax Havenかつ優秀だが人件費の高くないエンジニアのソースであるという情報を入手。(8% tax rate in Belarus vs 20% in Estonia)

気になったのが、どう優秀なエンジニアをキープしているのか。優秀なエンジニアって起業しがちじゃないですか? エンジニアが貢献したプロジェクトのDividentがもらえれる仕組みが導入されていたり、いろいろ工夫していましたが、根本的には、東ヨーロッパなどまだまだ経済的には豊かではない国においては経済的安定を重視する傾向があり、シリコンバレーのようなSpiritとは違うのだろうなと思いました。

独自のProject Managementフレームワークがあると説明してもらったのでメモってきました。(これ日本でビジネス書にしたら売れそう)

  1. Quick Start
  2. R&D (Reduce and Drop) meeting
  3. Scope definition & Solution design
  4. Presenting solutions
  5. Offer Presentation and Contract
  6. Kick-off
  7. Product development circle
  • Iteration planning
  • Delivery demo
  • Restospective (Product manager input and feedback)
    • MVP release
    • Support afterlive
  1. - Pilot retrospective & release plan
    
  2. - Development Cycle
    

各PJTメンバーのアサインは以下の通りらしいです: Team leader, Analyst, architect lead/developer, developer, tester, UI/UX designer, system administrator

OriginalMy

わざわざブラジルからエストニアに引っ越してきて起業したブロックチェーンベースのKYCソリューションを提供するスタートアップ:OriginaMy

どうしてわざわざブラジルから?と聞くと思いがけない答えが。 「ブラジルは暖かいから、仕事の途中にビーチに行く誘惑・衝動があるんだ(セクシーなお姉さまもいますしね)。でも、エストニアは寒いから余計な邪魔が入らず仕事をし続けられるんだ」 昨日も朝の2時まで仕事をしていたのだとか。

最近は、KYCに加えて、KYT(Know-your-transactions)という単語も出てきているそうな。というのも、仮想通貨におけるマネーロンダリングが発覚しており、ブラジル規制当局が仮想通貨のすべてのトランザクションを仮想通貨取引所に報告させてるようになり、似たような規制がエストニアでも始まる動きもあるらしい、。

これは、日本人には想像し難いエストニアの一面ですが、会う理由さえしっかりしていれば、規制当局など政府側のお偉いさんに比較的簡単に会えます。(政府の規模が日本よりも圧倒的に小さいという一面もあります) 一般論ですが、日本は政府の高官に会えたとしても、腹を割った議論ができない場面が多く、他の国でも同じだ、と思い込んで、自分の思う方向に規制を決めたり、次の規制をいち早く教えてもらったりなどエストニアのこのようなオポチュニティを逃しがちという印象を受けました

BlockHive

みんな大好きBithiveの日下さんにお会いしてきました。3時間議論して、6ページ分のメモを紙でとったのですが、ちょっと力尽きたので、気が向いたら書き起こしますw

BitofProperty

不動産への投資をブロックチェーンを使って小口化するスタートアップ:BitofProperty

特筆事項はないですね。 日本にもよく来るらしいです

Startup Estonia

エストニアベースのスタートアップを支援する組織:Start-up Estonia

ばっちりサイバーセキュリティ担当がいました。なんで?と聞いたら、「だってDigital Nationだから」とあっさり。

flagship start-upsは以下だそうです:

LIFT99

観光名所になていますが、正直、普通のコワーキングスペース:LIFT99 日本からわざわざ来て、これを見に行く余裕があるのであれば、タリン以外のエストニアの街を訪れたほうが価値があると思います。

lift99

コメント

セキュリティ・スタートアップブーム

通常のドリンク(コーヒー・紅茶)がかなり高品質だったことに加えて、Veriffはチョコの箱をお土産にくれ、Helmesは本格的なはちみつやオートミールクッキーなどでもてなしてくれました。また、どちらも本当に豪華なオフィスで、(エストニアの不動産が日本と比べて圧倒的に安いという一面もありますが)セキュリティ・ソフトウェア周りのスタートアップは非常に好調という印象を受けました。

データビジネスをやるスタートアップの矛盾

スタートアップをやるのってかっこいいですよね。少なくともそういうイメージが社会的に植え付けられていますよね。

データ周りのスタートアップをやる際、人権やデータ利用における誠実さ・倫理観が大事になってくるのですが、リターンを求められているスタートアップでは後回しにされがちなという事実もあるような気がしています。 余裕のある大企業の方が、もしかしたら、数多くの利用者を持つサービスへのDiversity & Inclusion要素の追加に取り組んだほうが世の中にインパクトが残せるのかもしれない、と思ったり。

Non-Start-up編

JCI World Congress 2019

日本人がわざわざエストニアに行って開催する日本人向けのイベント:JCI World Congress 2019

良い情報ソースを知っていれば自分でオンラインで情報収集でき、お話を聞きたい相手がいれば比較的手軽に会いに行ける環境が整っている中で、わざわざイベントを開催する、もしくは、わざわざイベントまで足を運ぶ意義って何だろうと思う今日この頃です。

とはいえ、いくつか参考になりそうなスライドはあったので載せておきます↓

E-resident

pay taxes

register a private limited company

digital business environemnt

Estonia tac ssytem

banking

プレゼンの一つに会ったLingvistについてTWしたら思いがけない反響で、Lingvistにフリーマーケティングしちゃったなとw

Embedded content: https://twitter.com/kristinayasuda/status/1192062421189484545?s=20

Palo Alto Clubという開催場所の名前にビビる私。

paoalto

近くに、ホワイトチョコ味なのに、見た目は真っ黒な不思議なアイスを売るお店を見つけちゃいました。

Enterprise Estonia

エストニア政府がエストニアへの投資を促進するために設立した組織:Enterprise Estonia

Start-up Estoniaと両方訪問する日本のスタートアップも多く、両者のすみわけを知りたいところ

最近は某商社さんがエストニアに支社を作ったそうな

ちなみに、エストニア人がチームの中にいるのであれば、このような組織に頼る割合が格段と下がりますね。

ちなみにエストニアにはEstonian Open Government Data Portalというものもあります。 少し見てみたところ、データ自体はエストニア語だったので、挫折してしまったのですが、最近GovTechに注目している身としては日本にも同じものがないか・作れないか気になりました。

The Open Data Portal provides a single point of access for general public to unrestricted public sector data with the permission to re-use and redistribute such data for both commercial and non-commercial purposes.

Tallin University of Technology School

ハーバード大学でも強弁を取るProf.Wolfgang Johannes Max Drechslerにお会いしてきました。

電子国家と考えるときに文化的な要素を考える大切さを学んできました。 エストニア人はDNAデータを含めた個人情報の共有に比較的積極的らしい。 自分のDNAデータを共有は、自分の家系のDNAデータの共有に等しいので、私は絶対に嫌ですが。

EU内でDigital Identityの法律を作るブレスト用の会議の立ち上げを任されていたのだが、イギリスからの大反対で実施できなかったという情報や エストニアの離婚率は87%という情報も入手

こちらはAcademicっぽいかなり概念的な雑談だったので、政治学のバックグラウンドを持つ私にはたまりませんでした。

エストニアの方がロシアよりも寒かった件

Me

【ご参考】エストニア関連の他の記事

Forbes Japanのエストニアに関する記事:今回お会いしたBlockhiveの日下さんもコラムニストとして活躍中!