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マイクロソフト社員がデジタル難民になるほどデジタル化した深圳

2020-01-16 15:00

1/13-14に開催されたMicrosoft Ignite the TourにOnsite-Controllerとして深圳に行ってきました! 1.5年前に中国に行った時よりもデジタル化が進んでおり、知り合いに案内してもらうまでは最新テックに常に触れているはずの私でもデジタル難民状態でした。

ただ、デジタル化自体は「排他的」に進んでおり、中国在住者にとっては便利だが、中国語を話せず、中国の銀行口座を持っていないためQRコード決済(WeChatPay、AliPay)が利用できない、私のような短期滞在者には不便な部分がとても多かったです。 案内してくれたのは、香港中文大学で博士課程に所属している人類学者の石井大知さん!彼との議論を中心にまとめています。

目次

  1. O2Oスーパー「フーマー」
  2. 顔が決済手段
  3. この程度で済んでいる監視社会?
  4. セキュリティチェック
  5. 外国人に優しくない中国本土
  6. GovTech
  7. 5G + VR
  8. 公園文化

1. (噂の)フーマー

泊まっていたホテルのすぐ横のショッピングモールの中に、半径5km以内に住んでいればオンランで頼んだものを30分以内に届けてくれるという噂のスーパー、フーマーを発見! お店の中には、オンラインで受け取った注文通りに袋に詰められた商品を、地上にある配達バイク隊まで運ぶためのレールが頭上に設定してありました。

O2Oの前提

オンラインで注文する前に商品を自分の目で確認できる実物のスーパーという場を設けることで、e-Commerceにおける商品の質への不安を解消しています。 各商品の料金表示の横には、その商品をオンラインで購入するためのバーコードが設置されており、オンラインで購入するためのオフライン視察のための環境が整備されてありました。

デジタルサイネージ

各商品の料金やバーコードは全て、紙ではなくデジタルサイネージに表示されており、これによって需給に応じたリアルタイムでの価格変動という、データドリブンな価格設定が可能になっています。 値下げされているものは何割引きかが赤で表示されており、2色以上使えるKindle並みの高画質なこのサイネージに相当なお金をかけているようです。。

鮮度の保証

「30分で届けられる=鮮度を保証できる」ためか、スーパー内には、カニ・アサリ・ロブスターなど生きた魚介類が入った水槽コーナーが! かえるやスッポンまで売っていました。 日本も築地がなかったら、スーパーの中に魚屋を作るようになるのだろうか。

かえる

かえる

スッポン

スッポン

お魚

お魚

格差によって支えられている

フーマーが可能になるのは、オンラインで注文する側の収入と、バイクで配達する側の人件費が先進国と途上国並みに大きいから、だと石井さんが解説してくれました。 そして、この格差がなくならないのは、中国の戸籍制度が原因であり、戸籍制度が変わらないのは、既得権益+国民管理の2つの理由があるそうです。

中国の戸籍は生まれた土地に結びついており、戸籍がない都市では家も買えず、長期滞在できない仕組みになってるため、中国各地の農村から深圳に出稼ぎに来た人が一つ上の社会階級にいける可能性はほとんどない。

発言力のある、出稼ぎ労働者を受け入れる深圳のような都市の中上流階級は競争激化を避けるために戸籍制度の変更に反対し、政府の視点から見ても既存の仕組みで国民を上手く管理できているため、変更するインセンティブがないのです。

自分では運びたくないようなものが注文されていた

実際に配達バイク隊が設置されている階まで上がると、箱詰めしている倉庫などがオープンに見れるようになっており、一注文当たりの量が結構多く、特に10Lの水ボトルが大量に並べられておりました。

具体的な様子はこちら↓

Embedded content: https://youtu.be/CoDItmeM300

自分で運ぶのには手間がかかるものが多く注文されていました。 箱詰めされた商品をバイクに積むまでには動かないエレベーターを歩いて運ぶ必要があり、相当タフな仕事だなという印象を受けました。

具体的な様子はこちら↓

Embedded content: https://youtu.be/d66wuQrIXuI

2. 顔で払うという新しい決済手段

ショッピングモールをぶらぶらしていると、UFOキャッチャーの横に、顔認証でチャージできる機会を発見。携帯がないとなにもできない中国だが、もはや携帯も必要のない生活を目指しているのかもしれません。 チャージしたい金額を押すと、顔認証する画面にかわり、外国人がやると追加の認証が求められるのですが、中国人がやると顔認証が通れば自動的にお金がウォレットにチャージされます。 UFOキャッチャーをやらせ続けるには良い戦略ですね…

具体的な様子はこちら↓

Embedded content: https://youtu.be/Ow6h6zOOypE

3.この程度で済んでいる監視社会?

石井さんと話していて、「中国の監視社会がこの程度で済んでいる」のがすごいという言葉に考えさせられました。 パスポートがないとホテルに泊まれない、など個人の身分証明にほとんどのサービスが結びついている中で、偽物のパスポートが簡単に手に入ったり、パスポートがなくても泊まれるホテルの闇市場があったり、と豊富な代替案が許容されているらしい。 彼が言いたかったのは、「中国社会は完璧に統制されているように見えて、穴がたくさん」ということ。

4. セキュリティ

私が一番イライラしたのは、セキュリティチェックの多さでした。サイバーセキュリティではなく、身体的なセキュリティがあらゆるところに設けられています。 どうしてここまで厳しいのか、聞いてみたところ、何かがあったときに責任者の首が簡単に飛ぶからではないか、というのが石井さんの見解。しかも、言葉通りの意味で本当に首が飛ぶ可能性があるため、責任者は取りうる措置は取っておこうという行動をとるのだとか。

チェック自体は適当

セキュリティチェックポイント自体は数多いですが、チェックの中身はすごく適当。ビーとなっても止められないし、荷物を機械を通さずに持ったまま通っても何も言われない、という不思議な経験をしました。社会主義のビュロクラシ―においては取り組みの質ではなく、その取り組みが実行されたという記録が紙上で残ることの方が重視されるらしいです。

5. 中国本土は外国人に優しくない

※ あくまで私の個人的な体験です。

  • 支払い手段は、外国人が持てないWeChatPay か AliPayが主要
    • 短期滞在者は中国の銀行口座がないため、基本的にはどちらも持てない。代替案はAliPayのTravelXXX(ひみこからのリンク)が登場したが、私がやろうとしたときはアプリが起動せず、結局使用できませんでした
    • クレジットカードがどこでも使えないため、お金があるのに払えない、という不思議な事態が発生
    • ということで、ATMで現金を引き出さざるを得ない状況に…
  • 中国語が話せないとどこにも行けない
    • 英語が話せる人はとても流ちょうに話せますが、基本的には話せない方が大半という印象を受けました
  • 携帯・インターネットが生命線
  • 携帯がないとなにもできない。翻訳アプリなどで何とかもならない

充電

生命線を保つためにあちこちに有料充電スペースが。日本でも流行るのかな

  • VPNがないと世界から切り離される
    • 携帯用+MacBook用はHexatechがおすすめ

中国は、中国在住の人以外にとっては「排他的な」デジタル化が進んでいうのかもしれません。

中国で短期滞在するための3大神器は、AliPay・VPN・翻訳アプリであることだけは確かです。

6. GovTech

あまり深堀はできていませんが、そもそも役所の人間が手続きをまともに説明できないことが多いため、デジタル化が加速しているらしい。

7. 5G + VR

この最新テックに関するバズワードを組み合わせた広告を見て、5Gを何に使おうか、と頭を悩ませている日本企業と取り組んだPJTのことを思い出し、中国は実践が早い、となんとなく悲しくなる私。

8. 公園文化

深圳は緑が多い。しかも、公園のスケールがでかい!深圳海湾公園をぶらぶらしていると、平日の午後であるのにも限らず、セルフィ―を撮る若者、サイクリングをするカップル、お散歩する老夫婦、サッカーする小学生などたくさんの人がいました!

緑と深圳

深圳の高層ビルと緑のコラボが新鮮!

プチプラアート

そして公園の入り口にあった、鉄筋の間におそらく建築材のあまりを挟んだだけのプチプラアートも中国ならでは。エコだし、あまりの建築材が足されることで変わる「生きた」次世代アートだと私は思いますが