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日本における「失敗」に対する許容度をあげるために

2019-08-30 22:00

アナウンス通り、「人生が自分のとらえ方次第で方向性が変わる話」をしたいと思います。

突然ですが、ちょうど一年くらい前、Thompson Reuters主催の法律業界のイベントで登壇した時のことです。Thompson Reutersとは「コンテンツ、専門知識とテクノロジーを連携させた法律ソリューションを提供する情報起業」です。 スピーカーは4人。日本のユニコーンスタートアップのIPOを支援した弁護士、世界トップの弁護士事務所のベテラン弁護士、大手IT企業を歩き回っているインハウス弁護士、そしてLegalTech NGO理事の私でした。法律業界において圧倒的な存在感を放つ3人の横に並び、自分は場違いなのではないかと思いつつ、パネルディスカッションがスタート。

案の定、2つ目くらいの質問で、論理を頭の中で失い、口ごもってしまいました。「この若い子、なんでここに呼ばれたのだろうか」と会場にいる人が思っているような気がして逃げ出したくなりました。

でもその時、次のような考えが頭をよぎります。「来場者に、私がここにいるべき存在で、聞き手に価値を提供できると思ってもらうためには、まずは自分がそう思わないと説得力ない」

この気持ちの切り替えが私を救いました。

他のスピーカーは確かに経験豊かだけれど、新しいことはほとんど言っていない。 その反面、最新技術を駆使して発行するアイデンティティが機能するための新しい法的秩序を作り出そうとしている私の活動は、誰も考えたことのない、解のないワクワクする世界。

最新技術の理解があり、一般市民の法的フレームワークに関する考えを知っているという自分の強みを活かして、「法律業界で使える最新技術とは」、「普段弁護士が接する裕福層以外の一般市民が必要としている法的秩序とは」というメッセージをもって語ったところ、来場者の興味直球ど真ん中ストライク。 イベント後にThompson Reutersはじめ、Mastercardやデロイトなどからくさんのビジネスチャンスのお声がけをいただきました。

あのまま「自分は場違い」と思い込んでいれば、その後の展開はなかったと思います。 自分をどう見せるかは自分が決めること。それを身をもって学びました。

上手くいかなかった時こそ強くなれるチャンス

ただ、上記の経験のようにスムーズにいかないことも、もちろんあります。 「準備万端。怖いものなし」というくらい準備しても、人生様々な要素が絡み合うものですから、思い通りにいかないときもあるわけです。

そのような経験の一つが、Schwarzman Scholarsという毎年100人を選出する米国のエリートクラブに選出されなかったことです。 最終ラウンドの200人まで残り、面接の準備を手伝ってくれた人全員が完璧と言ってくれるまで練習したのに、誰もが名前を知っている米国銀行CEO、シンクタンク所長、US州知事など豪華なパネリストとの面接やグループワークの末、残念、ということになりました。

原因は教えてもらえなかったのですが、「インターネットのガバナンスの仕組みが必要。ステークホルダーを巻き込んだボトムアップの法的秩序で作れる。従来の議会ドリブンの法律では、もう手に負えない」という話をしたところ、面接官が「ハテナ」という顔をし、それまでの好意的な空気が変わったような気がしたのは覚えています。 今回、Forbes 30Under30受賞のきっかけになった想いですから、時代が私に追い付いていなかったのでしょう(笑)

もちろんへこみました。 ただ、一瞬一瞬その時に持ち合わせている情報でその場に応じて対応しているわけなので、「別のことを言えばよかった」なんて後悔はしないと決めています。

Schwarzman Scholarsを受賞していれば、アクセンチュア入社1か月未満でUNESCOの国際会議で登壇し、それがきっかけでハーバードビジネスレビューに寄稿し、それがきっかけで受注したブロックチェーン案件からブロックチェーンコミュニティを作りはじめ・・・と今の私はいないわけで。 いまの自分のライフスタイルが本当に好きなので、Schwarzman Scholarsに選んでくれなくてありがとう、と感謝したいくらいです。Schwarzman Scholarsになった人で30Under30受賞者いないですし。

このような経験を人生で何度もしていて、くじけそうになるたびにより面白い新しい道を見つけてきたので、別の選択肢は人生において必ず存在し、それを見破れるかどうかが勝負、と思うようになりました。 新しい道が当初欲しかった道よりも色あせて見えても気にしません。なぜかというと、「Don’t try to make a best decision, but make your decision a best one」、つまり自分が下した決断を最良にするのが成功への近道だから。

思っているのと路線がズレた時、どう考えるか

上のような気持ちの切り替えは思うほど難しくないです。

まずはちゃんとヘコみましょう。

そして、切り替えましょう。と言いたいところですが、そんなの、無理です(笑)くよくよ考えてしまって、考えがループするのは人間当たり前です。 ただ、新しい選択肢が用意されていると信じて、それを探し続けることだけは辞めてはいけません。時間がたてば切り替えられます。ただその時に打ち込んでいるものがないとその時に成長が止まってしまうので、それだけは避けたいです。

多分一番大事なのが、上手くいかなかった自分をほめることだと思います。 東大に一発合格し、マッキンゼー(トップコンサルティングファーム)に新卒入社した人が起業しても、ほとんどの場合は「信頼できない」と、ある投資家が言っていたのがすごく印象に残っています。理由は簡単で、そのような経歴の人は大きな困難の乗り越え方を知らないから、一度壁にぶち当たるとこころが折れてしまうケースが多いのだとか。 上手くいかなかったことを乗り越えられたときが、一番自信をもっていいときといえるのかもしれません

つまり、①へこみながらも、②新しい選択肢を探し続け、③自信をもつ、ことが大事!というのがいまの仮説です。#この仮説を進化させる余地は十分ありそうです。

結論、何が言いたいかというと、谷があるから人生面白い、と思えた人が勝ちなのです。 このように思える人が増えると、日本における「失敗」に対する許容度が一気に上がると期待しています。

ただ、私がお話する機会のある、バングラデシュの「辺境に置かれた」人々は、上手くいかないことが当たり前。再チャレンジするのも当たり前。 逆に、新しい選択肢を探し続けてもなにもよくならないから、「抜け出せない谷」が続くから諦めたいんだけど、「生きていくためには探し続ける必要がある」という人も多い。

再チャレンジをしたときに、新しい世界が見える機会が与えられているのは日本の特権。「抜け出せる谷」である場合が多い。…見逃されがちかもしれませんが。 私が描く「全員が平等に機会にアクセスできる社会の構築 (Access to Opportunity)」の「機会」には、チャレンジしたときに状況を変えられる「機会」も含まれています。

次回は、「アイデンティティに興味を持つきっかけ」はどのようなものがあるか考えていきたいです。

と、その前にTICADのキモノショーに参加させていただいたので、番外編を書きたいと思っています。アフリカ首脳の出迎えや安部首相主催の夕食会でおもてなしをして参りました(笑)