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Politics

元内閣府副大臣と考えるマイナンバーカードの今と今後

2019-09-13 00:15

先日、パネリストとして参加したデジ憲3(デジタル憲政フォーラム3)  にて、個人番号(マイナンバー)制度に従事されていた内閣府大臣補佐官の福田 峰之さんと「本人認証」についてお話する機会がありました。 日本のマイナンバーカードと、私が現在取り組むバングラデシュの医療IDは、「国民に機会を平等に与えるための大事な社会基盤」といった共通点があると感じたので、記事にまとめます。

マイナンバーカードの概要

現在マイナンバーカードの普及率は12.8%とのことですが、皆様、マイナンバーカードはお持ちでしょうか。

私は、2016年の夏から持っています。制度が始まったのが2016年の1月なので、かなりのEarly Adopterです(笑) 政府による新たな管理手段の一つであり、どうせいずれ持つことになるのだから、とマイナンバーカードを持つこと自体に違和感は全くありませんでした。 また当時住んでいたEUでは、パスポート以外に国民IDカードのようなものを持つことが当たり前でした。

反対派の根拠を調べてみた

しかし、2017年に日本に戻ってきてマイナンバーカード反対派の多さに驚きました。一番衝撃を受けたことは、反対する理由がはっきりしていないことでした。

周囲に尋ねてみたところ、一番多い理由は、「便利さがわからない」、「運転免許証・パスポート・健康保険証」があるのにマイナンバーカードはなんでいるの」という声でした。 ただアメリカの場合も運転免許証・パスポート・健康保険証に加え、社会保障番号(Social Security Number)がありますが、生活に馴染んでいますよね。

更に調べてみると、「普通に生活している人にはマイナンバーは便利なものですが、年金や生活保護の不正受給、脱税の対象者は、大変に困ることになります。 という声もありました。 では、マイナンバー反対派はみんな不正を起こしているのでしょうか。それは違います。

手続きが面倒すぎて反対派になる人もいたり。 これは本質的ではない気もしますが。

保持者を計算してみた

なんと、日本のマイナンバー保持者はエストニアの国民ID保持者の10倍です。 エストニアの国民IDは普及率ほぼ100% と注目されることが多いですが、エストニアの人口は130万人なので、実質IDを持っている人は約130万人です。 一方、日本は普及率12.8%ですが、エストニアの約1,000倍の13億人の人口がいるので、掛け算するとマイナンバー保持者は、1,600万人。 つまり、エストニアの10倍以上の人数が持っているではないですか。
着々と普及を進める日本政府、恐るべし。

マイナンバーカードで気になった点

セキュリティ

マイナンバーカードに関する懸念で「プライバシーへの重大な脅威」というものがあり、きになりました。 個人的には、オンラインでもオフラインでも日本ではプライバシーなんて存在しないとも思っています(笑)

マイナンバーカードは、プライベートにおける情報セキュリティがどのように担保されているかというと、4桁の暗証番号ですよね。機密性の高い書類においては、より長い暗証番号による二段階認証が求められます。 チップが入っているので、対応ICカードリーダーやアンドロイドのスマートフォンにかざすことで読み取れるのです。(iPhoneは今年度から対応予定)

今後、徐々に異なる政府機関の保持する個人情報が結び付けられていくためか、パスポートにも運転免許証にも健康保険証にもない暗証番号がついています。 暗証番号の管理は自己責任。仮想通貨ウォレットの秘密鍵と一緒です。(マイナンバーカードは行政機関に問い合わせれば再発行できます)

ただ、一人ひとりが自分の個人情報がどう使われているかについて考え、管理責任を持たない限り、「自分の個人情報が知らないところで自己の意思決定を左右することに使われている」ことに陥るので、暗証番号管理の自己責任は、自然な流れだと考えます。 意思決定を大企業のアルゴリズムに左右されたい方はご放念ください。

認知症の高齢者はどうするのか

バングラデシュのプロジェクトで自分で意思決定ができない子供のIDをどうするか、について議論する機会があるため、気になりました。日本の場合は、認知症の高齢者のIDはどうするのでしょうか。 一応、高齢者の子供娘や息子がIDの使い方を理解していれば大丈夫、ということになるそうです。つまり、Guardian(後見人)モデルです。 この時、後見人がどのようなときに、どの範囲まで判断していいのかが大事になってきますが、アメリカの場合は、後見人がすべて判断するORすべて判断しない、と白黒ついていることが多いのだとか。

マイナンバーカードの今後

福田さんは「日本はマイナンバーカードの普及率が100%ちかくになったらすごいことになる」とおっしゃっていましたが、これは間違いないですね。 今後マイナンバーカードがどうなるか考えてみました。 まず、一定の普及率を超えた時点で義務化されるでしょう。(考えるまでもないかですかね)

生体認証が加わる

前述に加えて、まずマイナンバーカードには4桁の暗証番号に生体認証が加わりますね。 福田さんが悔しがっていたのは、生体認証と結びついているインドの電子IDカードの方が日本より高度であることです。

ちなみに、バングラデシュもNational Identity Card(NID)というマイナンバーカードに該当するものが存在し、2016年からはICチップが埋め込まれ、網膜などの生体認証情報と結びついたSmart NID が発行されています。

ホワイトペーパーを書いたときに世界各国の国民IDについて調べましたが、電子国民IDをどの軸で評価するかは考えどころかもしれないです。

携帯の中のアプリ化

まず、将来的にマイナンバーカードはスマホ内のアプリになっているでしょう。 バングラデシュプロジェクトのテックパートナーのTruu.idは既に[携帯内のIDウォレット](Evernym and Truu - APPG Blockchain Online Showcase)を実証中です。

他のデータとの統合

現在、MyDataJapanという一般社団法人の立ち上げ・運営に関わっています。(以下、ミッションです)

「引用する」”私たちはパーソナルデータに対する個人中心のアプローチに向けた取り組みを推進しています。 個人が自身のデータについて十分に理解し、主体性と主導権を持って、自らのためにパーソナルデータを活用できる世界を目指しています。 この価値観を共有し、パーソナルデータのパラダイムを逆転させる MyData Japan の活動にぜひ参加してください。 MyDataへの宣言に署名し、このパラダイムシフトを推進しましょう。”

これに対し、「データを個人のもとに集めるのはマイナンバーカードでできる」と、福田さんにあっさり言われてしまいました。いまできないのは、紙でもらっても仕方がないが、政府機関がデータをデジタル化したまま渡す準備ができていないからです。 イメージは、エストニアのX-Roadのように、各政府組織がデータを持ち続けながら、一つのカード番号に結び付けられているようなものでしょう。 すなわち部分的にブロックチェーンも絡んでくる? でも、それって結局政府がコントロールしているID、本当に個人中心ではなくなる可能性が高い。

西暦追加(切実)

マイナンバーカードって海外で本当に使えないのです。(大使館で投票に行くこと以外は) だって、生年月日が平成って書かれているから。バーやクラブで見せても理解してもらえるわけがない。携帯の画面で、「平成7年って1995年ってGoogleもいってるよ」と見せてもだめ。 お願いします。パスポートを持ち歩かなくてもいいように、私の海外の友達のようにカード2枚(IDとクレカ)で外出できるように、生年月日は西暦で書いてください。

ちなみに、女性は旧姓をいれて、名前の英語表記を追加する予定もあるそうです。 (こんなこといったら、運転免許証の生年月日も西暦にしてほしいですが…)

本人認証があってこそ、

真の意味での社会的弱者サポートが可能になる

これは、トラストアンカーどうするの?と福田さんからご質問いただいたことが会話の発端。 バングラデシュで私たちが作ろうとしているのは政府に頼らないID制度。つまりあるNGOが作ったIdentityを何をもって信頼するのかという問いが出てくるのは不思議ではないことです。

現在、私たちのNGO InternetBar.orgは認証機関になろうとはせず、大手病院が集める信頼に頼っています。信頼は政府に一極集中しているわけではありません。ある機関は別の機関よりも、ある個人が別の個人よりも信頼されており、Trust Waterfallという関係が成立しうるのも事実です。

政府の意向によってIDが持てない、奪われる人が多数いる社会では納得がいくが、政府が機能している日本では、想像しがたいモデルなのかもしれません。

最後は、アイデンティティは国民に機会を平等に与えるための大事な社会基盤であることで合意。 福田さんの言葉を借りると、「本人認証があってこそ、公平な社会、真の意味での社会的弱者のサポードが出来ます」 I could not have said it better

ただ、正直、マイナンバーカード持っていて特別便利だと感じたことはありません。ごめんなさい(笑) 私がバングラデシュで整備を着々と進める間、日本も便利になることを期待しています。

はっとさせられたこと

福田さんと話していてはっとさせられたのは、完璧なIDの仕組みはない、ということ。私は、貧困層のIDの現状に憤慨しすぎて、すべては進化していくことを見失いかけていたのかもしれません。

つまり、福田さんと合意したもう一点は、IDは長期的なプロジェクトなのです。 私は20-30年人生をかけるつもりです。だってインフラ整備ですから。

【書いていいかわからないけれど、書いておきたい余談】

議員さんの横に座ってみて

NHKから国民を守る党党首の立花孝志さんとの会話: 立花さん:「なんでそんなに美人なの?」 私:「…」 立花さん:「ねえ、なんで(逃げるわたし)」 DSC08904 そして衆議院議員 音喜多さんとの会話 私:「写真撮ってもいいですか(欲しかった)」 音喜多さん:「女性と写真撮ると奥さんに怒られるんだよなー(といいながら撮る)」 70045672 2130548227049994 9146705603605823488 n 政治の世界は男女の境界線がまだまだありそうです。(政治だけではないですが)

次回アナウンス

今回は、プライバシーや生体認証など大事なテーマをサクッとカバーしてしまったので、一つひとつ今後丁寧に議論していきたいと思う次第です。

そして、次回は「アイデンティティに興味を持つきっかけ」について真面目にかこうと思います。 (またなんか特別イベント入って延期になる気がする)

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